僕は部活の練習をサボって放課後も女子バレー部をのぞき見することにした。
「何でアンタなのよ!」
パチン、じゃない。
バチンっと思いっきり人が吹っ飛ぶような鈍い音がした。
喧嘩!?
こそっと音のする方に向かう。
放課後の校舎裏なんて何があるか分かんないスポットナンバーワンじゃないか!
影から覗くと、複数の女子が一人の女の子を囲んでいた。
え、中にいるの愛華ちゃんじゃん!?
一方的に何か言われても愛華ちゃんは俯いたまま。
複数人はいるけれど後ろの人たちはついてきました感だけ。
クラスでなら罵倒浴びせて一発殴るくらいの度胸はあるのに。
よく見ると、バレー部のジャージ。
身長も高いから先輩かな?
集団リンチはさすがに犯罪だよ!?
これ、大丈夫なやつ!?
先生呼んだ方がいいよね絶対!!
だけど言いたいことを言って女子たちは去っていく。
中にいた愛華ちゃんだけが、そこにいた。
崩れるようにしゃがんで顔を覆う。
「私悪くないもん…。何もしてないもん」
僕から見える背中は小さく震えていた。
この時思ったんだ。
廊下で困っている人を放っておけない愛華ちゃんよりも、クラスで女子同士盛り上がっている愛華ちゃんよりも、
周りに誰もいない、僕だけしか見なかった本当の愛華ちゃんが好きなんだって。

