この部屋は…和室ではない。少し広い部屋で 奥にも部屋がある感じ?この部屋には ソファーとテーブルとTVがあり、壁側にパソコンが置かれている机と椅子がある。


全体的にシックでお洒落。
まさか…巴琉の部屋?


「おい。まだふらつきそうか?」


急に声がしてびっくりしたけれど、巴琉が私の様子を見に来たのだと理解する。


「あの、すみません。自分でも情けない位に体力がないって思い知りました。すごく言い辛いのですが、もう少し力の要らない仕事なら出来ますが。」


「ハハ…そんなのわかっている。お客様の前で倒れられたら、そっちの方が迷惑だしな。」


確かにそうだけどさ…。


「そしたら、今度は厨房の方へ行くぞ。今日は初仕事だし、お前は昼まで頑張って、昼からは休め。俺から都さんに報告しておくから。」


歩きながら 巴琉からの優しいのかそうでないのか わからない言動を聞きながら、厨房に着いた。


今は玉葱の皮を剥いている私。バケツにてんこ盛りの量。これが終わったら じゃがいもの皮剥きらしい。


今まで料理をした事がない私だから、これ昼までに終わるとは考えにくい。


「あのさ、お前って不器用?」


「多分、器用ではないと思います。」


「じゃあさ、何が出来る?」


「……あっ。」


「あるのか?」


思い付いたのを言葉にするには、恥ずかし過ぎる。


「言えよ…」


「あの、美味しく食べる事です。」


「は?意味わかんねぇ。」


「だから、美味しく食べるんです。」


「馬鹿じゃないの?」


「1つの食べ方じゃなく、新しい食べ方で食べるのが得意です。」


「へ?マジで言ってんの?」


「それ位しか、ないのが辛いですが、新しい食べ方なら考えるのが得意なんで、機会があれば どうぞ仰って下さい。」


この話を厨房の料理長が聞いていたみたいで、メニューを考える時に来てくれないか?と声を掛けられ 嬉しく思った。


巴琉がうんうんと何か考えていた姿は 私の視界には全くスルーだったのであった。