私の右手には、随分と大きいボストンバッグが1つ。いつもなら 高柳が運んでくれる荷物を 今は自分で持って運んでいる。


かなり重い。だけど普通の一般人なら、執事なんていないし、自分で荷物を持つのは当たり前、そんな事すら気付かない毎日を送っていた。


高柳が車で送ってくれたのは、初めて来た場所で…ここで私は どうしたらいいのか?ちょっと考えてしまう。


だって…どう見ても────旅館にしか見えない。


見上げていても仕方がないので、玄関になるエントランスから入って行く事にした。


不安な気持ちがあるけれど まだ見ぬ未来への期待感が 一歩を踏み出した。