バイバイまたね、クドリャフカ

 母と妹が亡くなり、喪が明けた頃だった。

『ほのか、父さんは仕事に行く。状況が状況だからあまり頻繁には帰って来られないが、戸締りはちゃんとしておけ。当分、必要なものはこちらで用意するから極力外を出歩くな』

『うん』

 言葉通り父は仕事に精を出し、私とじっくり話す機会もなくなった。とはいえ、まなかが一緒ならまだしも元々私と父が一対一で過ごした思い出もあまりない。

 あまり口数が多い人でもないし、仕事も不規則で忙しそうだったから。そんな父にまなかは懐いていて、いつも素直に甘えられる妹が羨ましかった。

 父もきっと私より妹の方が可愛かったと思う。

 家族ふたりになったのに、家に父がいても居たたまれなくなり私は部屋にこもってしまう。そして、気づけば父は仕事に向かっている。父とこの状況で真正面から向き合うのが怖かった。だって――。

「私は……お父さんの大事な人を奪っちゃったんだ」

 いつも明るくパワフルで家の中心だったお母さん。素直で可愛らしくて優しいまなか。そんなふたりが先に逝って、私が残ってしまった。

 お願い、許して。私ももうすぐ逝くから――。

「だから?」

 ぼそぼそと事情を話すと、遮るような声が響く。反射的に顔を上げれば穂高はまっすぐに私を見据えていた。

「全部、ほのかの推測だろ? お父さんがそう言ったのか?」

 鋭い指摘に、私は一瞬唇を震わせる。

「言っては、ない。けど私のことをよくは思ってないよ」

 いつの間に、お互い避けるようになってしまったんだろう。顔を合わせてもさっきみたいな感じだ。

「それも含めて、聞いてみればいい。お父さんの気持ちはお父さんしか知らないんだから」

 想像して私は即座に首を横に振る。