四国の片田舎であるここ、月城(つきしろ)市は比較的治安もマシだった。市といっても人口は一万五千人にも満たないほどで、今はもっと少ないと思う。

 元々近隣の村が合併により市の称号を得たもので、栄えているかといえば話は別だ。でも、その微妙さのおかげで私は今もここに無事に住んでいられる。

 都心部では地球滅亡と聞いて自暴自棄になった人々による強盗、殺人が日常茶飯事に起こり、食料や必要物資の買い占めなどで人がごった返しているらしい。

 死人が出ることも珍しくはない。みんな殺気立っていた。

 肩が触れ合っただけでどちらかが死ぬ。日本とは思えないような出来事が続き、厳戒態勢が布かれるものの警察官や自衛隊員の数さえ不足した。

『ヨーロッパなら安全だ』『日本でも北海道なら大丈夫だ』『ロシアやアメリカなら……』

 情報が錯綜し、多くの人々が文字通り踊らされる。遠く離れて住む家族と合流したり、はたまた外国まで足を伸ばしたり。

 私の周りはどんどん人がいなくなった。消えていった。みんなどこに行ったんだろう。

 一部のお金持ちや権力者たちの間では宇宙への移住について冗談ではなく、真剣に考えている人もいるんだとか。でも一般市民には関係のない話だ。