バイバイまたね、クドリャフカ

『お父さんとお母さんは?』

『いないよ』

『家族はね、いないの』

 健二くんや理恵さんの寂しそうな表情が頭に浮かんだ。かまわず歩き出そうとする穂高にとっさに声をあげる。

「待って!」

 彼の視線がまたこちらに向けられ、逃げるように私はうつむき気味になった。

「でも、お父さんはきっと私と話したくないと思う。……お父さんは私を嫌ってるから」

 私の発言を受け、わずかに穂高に緊張が走ったのが繋いでいる手から伝わってきた。続きを言う勇気が出ない。

 喉の表面を空気が掠め、声を出そうにも何度も不発に終わる。

「……私のせいなの。お母さんとまなかが、妹が死んじゃったのは」

 なんとか振り絞って出せた音はカラカラだった。

「年末にお母さんの実家に帰省する予定だった。お父さんは仕事でいけないから私とまなかとお母さんの三人で。でも……」

 ありありと蘇る思い出を、痛みを伴いながら口にする。

 出発前夜、私が体調を崩し急遽帰省するのは母と妹だけになった。父は仕事だし、ふたりは私を置いていくか悩んみ、中止にしようかとも言いだした。

 それを私が断固反対した。飛行機のチケットも取っていたし、なによりおばあちゃんが待っている。

『ほのか、本当にひとりで大丈夫? お父さんは夜には帰ってくる予定だけど、つらかったら遠慮なく連絡しなさいね。お父さんにも言ってるから』

 家を出る直前まで、母と妹は私の部屋で名残惜しそうに心配していた。

『寝てれば平気だよ。おばあちゃんによろしくね』

『お姉ちゃん、なにか欲しいものある? お土産買ってくるよ。お年玉はばっちりもらっておくから、それ以外で』