誰も言葉を発しない。この沈黙を裂いたのは意外な人物だった。
「お姉さんも父さんと母さんがいないんだ。なら俺と同じだな」
声変わり前のあどけない健二くんの声が場を包む。彼はにかっと白い歯を見せて笑うと、理恵さんの手を取った。
「でも俺には、じいちゃんとミケがいるんだ。お姉さんも家族になればいいよ」
「え……」
「とにかく飯食おうぜ。おい、兄ちゃん。全部ひとりで食うなよ」
「食わねーよ」
最後は宮脇さんに対しての台詞だ。唖然としている理恵さんの手を引いて健二くんは座るように促した。
「あら? これってどういうことなの?」
またまた唐突に第三者の声が間に入る。穂高が『え?』と小さく声を漏らし、私も声の主を視界に捉えて目を見張った。
驚いたのは私たちだけのようでは谷口さんは冷静だった。
「樫野(かしの)さん、あんたどうしたんだ?」
『樫野さん』と呼ばれた女性は、先ほど店を覗いて去っていた女性だ。その前に突拍子もなく私に貧血の薬をくれた人で……。
「それはこっちの台詞よ。さっきお店の前を通って中を覗いたら、なんだかただごとじゃない雰囲気だったから、お巡りさんを呼びに行って一緒に来てもらったの」
「お父さん!?」
「ほのか?」
樫野さんから遅れて現れた人物に、私は思わず今日一番の声をあげる。見慣れた紺色の制服、制帽。樫野さんが連れてきた警察官は、まぎれもなく私の父だった。
「え、お父様?」
樫野さんが不思議そうな顔をして、私と父を交互に見た。父の顔はすっと険しくなり、眉間に皺が深く刻まれる。
「お姉さんも父さんと母さんがいないんだ。なら俺と同じだな」
声変わり前のあどけない健二くんの声が場を包む。彼はにかっと白い歯を見せて笑うと、理恵さんの手を取った。
「でも俺には、じいちゃんとミケがいるんだ。お姉さんも家族になればいいよ」
「え……」
「とにかく飯食おうぜ。おい、兄ちゃん。全部ひとりで食うなよ」
「食わねーよ」
最後は宮脇さんに対しての台詞だ。唖然としている理恵さんの手を引いて健二くんは座るように促した。
「あら? これってどういうことなの?」
またまた唐突に第三者の声が間に入る。穂高が『え?』と小さく声を漏らし、私も声の主を視界に捉えて目を見張った。
驚いたのは私たちだけのようでは谷口さんは冷静だった。
「樫野(かしの)さん、あんたどうしたんだ?」
『樫野さん』と呼ばれた女性は、先ほど店を覗いて去っていた女性だ。その前に突拍子もなく私に貧血の薬をくれた人で……。
「それはこっちの台詞よ。さっきお店の前を通って中を覗いたら、なんだかただごとじゃない雰囲気だったから、お巡りさんを呼びに行って一緒に来てもらったの」
「お父さん!?」
「ほのか?」
樫野さんから遅れて現れた人物に、私は思わず今日一番の声をあげる。見慣れた紺色の制服、制帽。樫野さんが連れてきた警察官は、まぎれもなく私の父だった。
「え、お父様?」
樫野さんが不思議そうな顔をして、私と父を交互に見た。父の顔はすっと険しくなり、眉間に皺が深く刻まれる。


