バイバイまたね、クドリャフカ

「あのー、お店ってもう閉まってますか?」

 不意にかけられた声の主に全員の注目が向く。鳥籠を持った女性の姿に私は反射的に叫んだ。

「理恵さん!?」

「あら、ほのかちゃんに穂高くん? どうしてここに? あ、猫が見つかったの?」

「えっと……」

「色々あったんです。体調は大丈夫ですか?」

 説明するのは難しく、言いよどんでいた私の代わりに穂高が答えた。相変わらずこういうところはそつがない。理恵さんはかすかに笑う。

「ええ、少し横になって楽になったわ。ここに来たのは、この子の餌になるようなものがないか探そうと思って」

 理恵さんが鳥籠の中に視線を送ると、インコは小さく鳴き声をあげてわずかに羽ばたいた。

「ミケ!」

 そしてどういうわけか、それを見た健二くんが弾かれたようにやってくる。辺りを見回したけれど猫の姿はない。しかし健二くんは迷わずに鳥籠にへばりついた。

「よかった、ミケ無事だったんだ!」

「え、健二くんの探してたのは猫じゃないの?」

 尋ねると彼は目を爛々とさせて元気よく答える。

「そうだよ。庭先に吊るしていた籠に猫が飛びついて、ミケをさらって行ったんだ。それが茶色いぶちの大きな猫でさー」

 なんと、私はとんでもない勘違いをしていたらしい。それは穂高も同じだったようで目を丸くしている。だって……。

「インコなのにミケって名前なの?」

「うん。ミケランジェロから取ったんだ」

「お前、ミケランジェロが誰なのかわかっているのか?」

 穂高が苦笑しながらツッコんだ。小学生にしてはなかなかマニアックなところを突いている。