バイバイまたね、クドリャフカ

 なんの冗談か、と最初に思ったのは一人や二人ではない。現に私もそうだった。志望校に入学しそれなりに楽しい高校生活を送っていたのに、とんでもない横やりだ。

 けれど嘘でも冗談でもデマでもなかった。テレビをつければ各国の首相や大統領が真っ青な顔でなにやら今後について話し合う映像が映し出され、NASAの偉い手が連日、演説でもするかのように説明を繰り返している。

 おかげで彼の顔と名前を嫌でも覚えてしまった人も多い。どんどん現実味が帯びてくる事態に、世界は大混乱に陥った。

 月が地球に落ちてくる事態はどうも免れそうにない。

 確率は九十三パーセントらしい。百パーセントではないのを喜ぶべきか、せめてもの気休めとして受け取るべきなのか。

 NASAの公表した情報を鵜呑みにするならば、地球が助かる可能性はたった七パーセントというわけだ。

 その数字がどういう根拠に基づいて出されたものなのか私は知る由もないし、説明されてもきっと理解できない。

 肝心なのは九死に一生どころか、ほぼほぼの確率で地球は滅亡する。一度救われた月という存在によって。

 運命の日は明日かもしれないし、一ヵ月後かもしれない。もしかすると今日かも。

 世界はもうすぐ終わるんだ。

 心の中で唱えると、喉の奥がきゅっと締まるような不快感を覚えた。普段、あまり意識しないようにしているのに、突然発作みたいに不安や恐怖の波が襲ってきてじっとしていられなくなる。今日もまさにそうだった。