バイバイまたね、クドリャフカ

「だったら、なおさらそれを置け。もっといいもんを食わしてやる」

 まさかの発言に耳を疑ったのは私だけではないはずだ。その証拠に言われた男性もぽかんと口を開けている。張りつめていた空気が一瞬にして溶ける。

 さらに店のドアが開いたかと思えば疲労感の漂う少年の声が聞こえてきた。

「じいちゃん、やっぱりミケ見つからねぇよ」

「もういい加減諦めろ。弱肉強食は自然界の摂理だ」

「セツリ? 焼肉定食はもういいって」

 状況に相応しくない少年の発言と彼の祖父のやりとりに気が抜ける。そして彼には見覚えがあった。それは彼も同じようで私たちに気づくと、ぱっと目を輝かせた。

「あー、あのときの! なに? もしかしてミケ見つかった?」

 期待に満ち溢れた表情詰め寄ってくる少年に、私はぎこちなくも答えた。

「そういうわけじゃないんだけど……」

「なーんだ」

 少年はあからさまに肩を落とした。その姿に胸が痛む。

「健二(けんじ)。少し早いが飯にするぞ」

「はーい」

 健二くんはぱっと切り替える。この状況になにも思わないのか、祖父の姿に対してもなにもツッコまない。

 彼の祖父は孫に指示を出すと。さらにまだ放心状態の男性に声をかけた。

「お前も手伝え。働かざる者食うべからずだ」

「兄ちゃんたちもせっかくだし食べていきなよ」

 健二くんが私達にも明るく提案してきた。しかしどう答えればいいのか、すぐに返事はできなかった。