バイバイまたね、クドリャフカ

「正直、俺はあんな行動取れないよ。それに理恵さんを送るのも本当はどっちでもよかったんだ。有難迷惑になる可能性だってある。でも、ほのかがものすごく心配そうにしてたから」

 彼の言い分に私は目を白黒させた。

「あそこで彼女と別れていたら、ほのかはずっとその後も気にしていただろ。だからだよ」

 彼の言い分に私は押し黙る。まさか穂高が私のことまで考えていてくれたとは思いもしなかった。

 そして理恵さんが帰ると言ったときに、自分が抱えていたモヤモヤの正体が少しだけ判明した。あのままでいいのかと悩んだ自分。でも、それって――。

「自己満足……だよね」

 穂高が言うように、有難迷惑だったかもしれない。理恵さんのためというのは建前で、本当は自分が放っておけないから善意を押し付けただけだ。

 穂高は立ち止まり、今度は真っすぐに私を見つめてきた。

「べつに。誰かを気遣ってあれこれ悩むくらいなら、自分の思うように動けばいいんだよ。どうせ相手の気持ちを百パーセント理解するなんて無理だ。だから自分が、ほのかがしたいようにすればいいんだ」

「……うん」

 小さく呟くと、今度は思い切って自分から穂高の手を握ってみる。不安を吹き飛ばすように力を込めた。

 昔から勉強はできるけれど、人間関係を築くのはどうも苦手だった。だって正解がないから。

 無意識に相手を傷つけた経験もあって、発言や行動を後から後悔することも日常茶飯事だ。それがますます誰かと関わるのを億劫にさせた。

 でも穂高の言葉に少しだけ心が軽くなる。

 たしかに相手の気持ちを百パーセント理解するなんて無理な話で、だからこそ自分で想像して考えないといけない。結局、決めるのは自分なんだ。