バイバイまたね、クドリャフカ

「猫探しもいいけど、気をつけないとだめよ。ここらへんジェイソンが出るんだから」

「ジェイソン?」

 私は目を見開いて抑揚なく繰り返した。出るにしても、あまりにも突拍子のないものだったから。

 私の反応に満足したんか、理恵さんはそれこそ猫のように目を細め、にやりと笑った。

「そう。子どもの頃から噂があってね。目撃証言もいくつかあったの。遅くまで外で遊んでいると、大きな斧を持った血まみれの男が『なにをしているんだ?』って声をかけてくるのよ」

 想像しただけで私の背筋は凍った。あいにくホラー映画は苦手だ。まだ口裂け女とかの方が笑って流せそうなのに、ここは田舎で生い茂った場所も多いので尿にリアリティがある。

 そのとき突然、うしろから肩に手を置かれ私は思わず叫んでしまった。

「わっ!」

 犯人は穂高で、呆れた面持ちでこちらを見下ろしている。続けて彼は私の頬に軽く手の指を滑らせた。

「ビビりすぎ。本気にするなよ」

「だ、だって……」

「ごめんなさい、怖がらせすぎちゃったかしら?」

 理恵さんは困ったように笑っている。穂高に触れられた箇所を慌てて手で覆うと、違う意味で心臓がドキドキしてくる。

 なごやかな空気が玄関に戻ったところで、すぐに事態は一変した。理恵さんが前触れもなく再び顔面蒼白になり靴を脱いで奥へと駆けて行ったのだ。

 胸騒ぎが起こり、不安な気持ちになる。ややあって理恵さんはのろのろと玄関に戻ってきた。