バイバイまたね、クドリャフカ

 手だけじゃない、じんわりと体全体が熱い。熱が発散できず、中にこもっているような感じだ。

「大丈夫か?」

「うん。普段まったく運動しないから」

 眉尻を下げて私は答えた。彼の家でもらった飲みかけのペットボトルを鞄から取り出し、蓋を開ける。

 すっかりぬるくなっていたけれど、火照った内臓には冷たく感じた。のどを潤し胃に届く。ほっと一息ついて目を閉じた。

 体力が落ちているのは運動不足のせいだけじゃない。今は慢性的に食料不足に陥っているのもある。生産や流通などが滞って、豊食と言われていた頃が嘘みたい。

 一部の権力者や裕福層が買い占めている、なんて噂もあるけれど少なくとも近くのスーパーは閉店が相次ぎ、お父さん経由でもらってくる食材などで我が家はなんとか食いつないでいる。

 今日の私のお昼は少しのご飯、おかずは熟れたきゅうりを炒めて塩こんぶをかけて味付けしたものだ。

 一応、お父さんの分もいつも残しておく。満足な食事などほとんどできず栄養も偏る。そうなると極力エネルギーを使わない生き方をするしかない。

 金銭トラブルで揉めるよりジュース一本で命がけのケンカが起こる確率の方がよっぽど高いのが現状だ。

「つらかったら言えよ。無理しても意味がない」

 私はゆるゆると目を開け、左に座る彼に視線を送った。

「大丈夫。穂高こそ無理しないでね」

「無理?」

「うん。なんだか顔色がよくない」

 屋根下の影にいるという要因もあるのだろう。それを差し引いても彼の顔色は青白く見えた。なんだか息も荒い気がする。

 もしかして私よりも彼の方がよっぽど――