バイバイまたね、クドリャフカ

「うん。正直、隕石の専門家には少し心動かされたけど、シェルターには興味ない」

「でも、もしも渡辺さんの話が本当だったら……」

「隕石と月とじゃ体積も威力も比べものにならないよ。仮に耐えうるシェルターがあったとしても俺の返事は変わらない」

 未練も強がりもまったく感じられない。穂高はなにげなく帽子越しに私の頭に触れた。

「だから、ほのかは気にするなよ。ほのかがいたからとかじゃない。それに彼女の態度、かなり失礼だったろ」

 穂高が言っているのは渡辺さんが私を無視していたことだろう。でもあれは無視というよりいちいち気にかける時間さえ惜しかったんだと思う。

 時間はみんな限られて切羽詰まっている。そんな中、渡辺さんはお父さんに頼んで車を停めてもらい、わざわざ穂高に声をかけてきたんだ。

 彼女のまっすぐな気持ちが、少しだけ羨ましかった。私はそこまで誰かに心を動かされたり、誰かのために行動するとかあったかな。

『でもシェルターには限りがあって、特別な人しか入れないの』

『俺は、特別な人間じゃないからね』

「……穂高は特別でよっぽど価値のある人間だと思うけどな」

 渡辺さんが穂高も連れて行きたいと思ったのは彼に対する好意の他にも、彼の能力に惹かれた部分もあると思う。

 どういった基準かは定かではないにしても、もしもシェルターに入れる人間を選別するのだとしたら、間違いなく彼は選ばれだろう。