バイバイまたね、クドリャフカ

 私は長めの息を吐く。潮の香りが鼻を掠めた。

「……ほかの惑星からすると地球って本当にすごい星なんだね」

 小学校の理科の時間に先生から『地球は奇跡の星だ』なんて言われた記憶がある。あのときは深く考えずにいた事実が、こうして身をもって感じる日が来るとは。

 この広い宇宙で太陽系の星が水星から海王星まで並び、確認できる範囲でとはいえ私たちの住む地球だけがこうして生物が生きていけるのだと思うとなんだか不思議だ。

「ほのかこそどう思っているんだ?」

「え」

 不意に握っていた手に力が込められる。足を止めて彼を見れば、真剣な顔でこちらを見ていた。

「今の状況。俺にどう思うかって聞いてきたけれど、その前にほのかはどう思ってるんだよ」

「どうって……」

 私は答えに言いよどむ。代わりに穂高が続けた。

「俺は、事情があって月の落下騒動があってから色々な人たちを見てきた。泣いて絶望して自分の家の屋根から飛び降りた人や、とにかく家族だけは守ろうと一家で安全と噂される土地へ行った人。淡々と自分の仕事や使命に精を出す人、信念を持って行動する人もいれば変な宗教や信仰にハマる人もいた。そもそも月が落ちてくるという情報自体を頑なに信じない人も」

 お前はどれなんだ? そんなふうに聞かれている気がして、私は視線を泳がせる。

「私は……受け入れたの。完全にって言ったら嘘になるけど。でも、もう疲れちゃったんだもん。泣くのも、絶望するのも、必死になるのも。だから考えないようにしたの」

 死ぬのが怖くないわけがない。もし本当に月が地球に落ちてくるのだとしたら、その瞬間はどんな感じなの?

 苦しまずに死ねるのかな? 死因はなにになる? 死んだその先はどうなるんだろう。