バイバイまたね、クドリャフカ

 こうして彼に会いに来たのだって、そんな気持ちからだ。

 話が決まればあとは行動するのみ。なんといっても時間は限られている。

 てきぱきと支度を終えた彼は明るい水色のダッフルバッグを肩にかけた。階下に下りると彼は祖母に出かける旨を伝える。

 彼の祖母はなにかを言いたげに眉をぴくりと動かした。さすがに止められるのではとハラハラする。

「そうね、穂高の好きにすればいいわ。気をつけていってらっしゃい」

 不本意と顔に書いてある気がする。無関心でも突き放すわけでもなくて心配しているのは伝わってきた。

 それでもこんな状況だからって最終的には本人の意思を尊重して『好きにすればいい』というのは、なんとも理解がある。

 男と女の違いか。私だったら許されそうもない。お邪魔したお礼を言い、彼の祖母に頭を下げた。

 外に出ると、やはり蝉の声が煩い。空は綺麗な青に染まっていたのに、今は雲が出てきている。

 日差しが遮られるのは有難いけれど天気が悪いと星は見えにくいのではと心配になる。

 空にはやはり不気味な形の月も浮かんでいて、視界を遮るように私は手に持っていた麦わら帽子をかぶった。

「その帽子」

「え」

 彼の指摘に私は首を傾げる。

「初めて見る。ほのかもそういう格好するんだ」

 思えば、お互いに制服姿しか見たことがなかった。今の私は白のフリルがあしらわれたトップスに、動きやすさ重視でチェックのキュロットスカートとスニーカーの組み合わせだ。