バイバイまたね、クドリャフカ

「そう。『天上の宝石』っていわれてて、オレンジの主星と青い伴星からなるんだ。このふたつは見かけの重星なのか、互いに重力的な影響を及ぼす真の連星なのかはまだはっきりとしていないんだけど、いつもそばにいて互いに輝き合ってる。望遠鏡で見ると、はっきりわかるよ。めちゃくちゃ綺麗なんだ」

 専門用語を交えながらも彼の勢いは止まらない。私が把握できたのはふたつの星の色くらい。けれど十分に心は動かされた。

「見てみたいな」

 気づけば素直に希望を口にしていた。ところが彼は意表を突かれた顔になる。

 なにかまずいことでも言ったかな?

 私の不安をよそに、安曇穂高はしばし考えを巡らせる素振りを見せた。そこでふと思い直し「本気にしなくてもいいよ」と付け足そうとする。

 しかし、なにかを閃いたのか悪戯を仕掛ける相談でもするかのような笑顔を彼はこちらに向けてきた。

「なら見に行こうか」

「へ? どこに?」

「西牧(にしまき)天文台へ」

「えっ!」

 まさかの提案に私はつい大きな声を出してしまった。西牧天文台は月城市に隣接する西牧村にある。

 市でも町でもなく村だ。市町村合併が進んだ今でも村として名前を残し頑張っていて、その西牧村にはいくつかの有名施設がある。

 そのひとつが今挙げた県内唯一の天文台だ。私は小学校の頃に社会科の授業で行ったっきりになる。

 基本的に天文台での活動は夜になるので、そこまで興味のない私はあまり訪れる機会もなかった。

 まさかそこに行こうと彼が言いだすなんて。

 見たいと言った気持ちに嘘はなかったけれど、なにやら本格的な話になってきた。