バイバイまたね、クドリャフカ

「そうだよ。私がここにいるのは、ある意味奇跡なんだからね」

 口にして彼と目が合い、どちらからともなく笑みがこぼれた。こんなふうに自然と笑ったのはいつぶりだろう。

 世界が終わるかもしれない事態に直面して、大げさかもしれないけれど私が笑えたのはこのときが初めてだったかもしれない。硬かった空気が一度崩れると、懐かしい雰囲気に包まれる。


「へー。ほのかはこんなときでも相変わらず予習復習をしていたわけだ」

「そういう言い方ってどうなの」

 私はつい口を尖らせる。まったく緊張感がないのもいいところだ。軽口を叩き合いながら私と彼は他愛ない話で盛り上がった。まるで放課後にふたりで勉強していた時に戻ったかのような感覚。

 けれどそれが私の心を落ち着かせていく。その延長線上で私は彼に尋ねた。

「安曇くん、宇宙好きだったよね。今の状況をどう思う?」

「なかなか切り込んでくるね」

 ここで深刻そうな顔をされたら、私はきっと自分の振った話題を後悔した。けれど彼はおもしろおかしそうに笑っている。

 だから私も下手に気を使わずに素直に返せた。

「だって聞きたくなったの。安曇くんは今の世界をどんなふうに思っているんだろうって」

「なんで俺?」

「それは……」

 彼はいつも私とは違う世界を見ていた。考えを持っていた。私とは違い、はっきりとした自分の信念にも似たものを。

 答えに窮している私に対し、彼はわざとらしく窓の方に目をやった。