目を見開いて勢いよく立ち上がる。もう長い間カットしていない肩下二十センチほどまで伸びている黒髪が揺れた。

 ドクドクと心臓が早鐘を打ちだし、エアコンの効いた部屋にも関わらず汗が噴き出そうだ。

 じっとしていたら飲み込まれる。気分転換でもしよう。

 エアコンを消して部屋の外に出る。ドアを開けた瞬間、動物の吐息のようなむわっとした空気が私を待ち受けていた。

 おかげでつい二の足を踏んでしまう。やっぱり部屋の中でいようかな。

 けれど私は一歩踏み出し、階段を軽快な足音で下りて行った。リビングに顔を出しても誰の気配もない。惰性でテレビをつけると、ニュースが流れていた。

『NASAはスペースコロニーの建設計画の頓挫を発表。また、新たに打ち上げた宇宙ステーションが空中分解しこれにより犠牲者は――』

 時刻は午後十二時過ぎ。出かけるには暑い気もしたけれど、今年は異常だと言われるほどの冷夏だ。

 その原因がどこにあるのかまでは、みんな興味がないのか、深く考えないようにしているのか。

 過ごしやすいなら文句はない。私は無心で顔や手足に乱暴に日焼け止めを塗り、両サイドの耳下で髪をまとめた。そのまま勢いよく外に出て行こうとしたが、その手前で玄関にかけてあった麦わら帽子が目に入る。

 機能性よりもお洒落さを重視していて、かかっている水玉のリボンに一目ぼれして買った。一瞬だけ迷い、せっかくなので帽子もかぶる。