だからといってプライベートで会おう、と誘える気軽さは私にはなかったし、彼だってそのつもりもないと思う。

 そもそも彼が学校をよく休む理由さえ話してもらったこともないし、私も自分から聞いたりしなかった。踏み込んでいいのか迷って、自分と彼との関係に戸惑う。

 内心では異性なのもあって、彼をはっきりと友達と呼んでいいのかも確信が持てずにいた。それは私が今までこんなふうに男子と特別親しくなる経験がないからなのもある。

 だから、名前で呼び合おうと彼から言ってもらえて本当は嬉しかった。

 年が明けて三学期になったら、みんなの前では無理でも彼とふたりのときには思い切って名前で呼んでみようかな。

 本人には告げず、心の中でひっそりと決意する。

 けれど結局、彼を名前で呼ぶ機会は訪れなかった。それどころか会うことさえ。

 年の瀬に飛び込んできた月が一年以内に地球に落ちてくるというニュース。世界の秩序は崩れ、学校どころではなくなった。

 学校に通う生徒は激減し、家庭の事情でと退職する先生も何人もいた。混乱の中、三学期が始まったので一応、学校に顔を出したものの安曇穂高の姿はなかった。

 当然だと思う。みんな、残された時間をどう過ごすのか嫌でも選択を迫られていた。私も結局、学校には行かなくなった。

 あれから半年以上も地球がもったのが奇跡だ。だから、なのかもしれない。今だからこそ彼に会いに行けるのかも。