バイバイまたね、クドリャフカ

 なりたいもの、か。 

『……私、誰かに必要とされる人間になりたいな』

 夢と呼ぶには漠然としていて、彼みたいに人類のために大きな偉業を成し遂げるとか、大それたことは言えないけれど。

 いつかたくさん勉強した分、選択肢や知識を広げて誰かの役に立って、必要としてもらえる人間になりたい。

 口にして声にしたからか、自分の中にストンと落ちてくる。

『なら、もう叶ってるね』

『え?』

 かけられた予想外の言葉に、私は素直に反応した。彼は眉をハの字にして笑っている。

『俺には紺野さんが必要なんだけど?』

 続けられた彼の言葉に私は大きく目を見開いて、続いて火照り出す頬を隠すように両手で押さえた。

『……問題、早く解いちゃおうよ』

 あからさまに話題を替えたけれど、彼は変に突っこんでこなかった。

 ホッとしたような、寂しいような。

 本当にストレートすぎるのも考えものだ。私じゃなかったら、勘違いする女子もたくさんいるに決まっている。そこで悶々と煮詰まっていく心の中でチクリと刺さるガラス破片を見つけた。

 彼が必要としているのは、私自身ではなく、現国が得意で自分と対等かそれ以上の成績優秀者を指しているんだ。もしも条件に合う存在が他にいたとしたら……。

 ひねくれた自分の考えに嫌気がさす。可愛くない自覚はあるけれど、これは重傷だ。

 彼と一緒にいると、クラスの女子たちと会話しているとき以上に心が揺れ動く。どうしてだろう。異性だから?

 ズキズキと痛む胸を押さえつつ、私は答えを追求せずに問題を解くのに専念した。