バイバイまたね、クドリャフカ

『物心ついたときから天文学や宇宙に興味があってさ。たぶん父親の影響が一番大きいんだけれど、それで子どもの頃にNASAのサマーキャンプに参加したんだ。そこで改めて決意して変わらずにずっと希望してるよ』

『へー。宇宙飛行士ってこと?』

『まぁ、手っ取り早く言えばそうかな。とにかく宇宙に関わる仕事がしたくて。そして人類のために大きな偉業を成し遂げるんだ』

 屈託ない笑顔はうそぶいている感じでもなく純粋だった。立派だな、と私は素直に感心する。彼なら本当にやり遂げてしまいそう。

『紺野さんはなにを目指しているの?』

『私?』

 急に話を振られ目をぱちくりとさせると、穏やかな顔をしている安曇穂高がこちらを見つめていた。大きくて形のいい目が細められる。

『そう。なにかなりたいものがあって勉強を頑張ってるんだろ』

 当然のように、そして曇りのない笑顔に私の胸はちくりと痛む。私はぎこちなく彼から視線をはずした。

『そう、でもないよ。まだ私、夢とかないし。安曇くんみたいに立派な目標とか、なにも……』

 なんとも言えない気まずさを感じ、しどろもどろになる。勉強は好き。知識も増やせるし、頑張れば結果もついてくる。

 でもその先というものが私にはなくて、なにかに向かって頑張る彼の姿が眩しくなり、勝手にうしろめたくなる。

『なら、これから見つけたらいいだろ』

 彼からの返事はあっけらかんとしたものだった。

『大丈夫。夢は無限大。これだけ頑張っている紺野さんなら、なんにだってなれるよ』

『宇宙にも行ける?』

『そう。近い未来、人類は火星に移住するし』

 どこまで本気か、冗談か。私は思わず吹き出した。彼も笑っている。