つまりこの学校に入学するだけでそこそこのレベルなのは証明されていて、そんな中で私は新入生代表として入学式で挨拶をした。自分にとっては当たり前だと思っていた。

 ところが翌日の実力テストの結果が張りだされたときに、私は自分の目を疑った。中学まで自分の名前は常に一番上にあった。それ以外の光景を見たことがない。

 なのに今、自分の上に名前がある。そのインパクトの強烈さといったら……。

【安曇穂高】

 大袈裟だけれど、足元から崩れ落ちそうになった。彼だから、というわけじゃない。誰かに成績を抜かれるなんて。

 全国模試で一番を取ることも珍しくない私が、学内でトップをあっさりと譲るとは夢にも思っていなかった。

 たった一点差、でも一位と二位とでは天と地ほどの差がある。

 周りは私が一位から転落した事態などどうでもよく、それよりも安曇穂高のすごさをさらに思い知らされ、彼に向けられる羨望の眼差しと人気に拍車がかかった。

 自惚れていたわけじゃない。ライバルが身近なところにいただけ。悔しさをバネにしてもっと頑張ればいい。

 私は静かに闘志を燃やす。彼に、というより自分自身に。

 彼の存在は逆に私のやる気を掻き立てた。身近にはっきりと負けたくないと思える相手がいるのはいい刺激だ。私は一方的に彼をライバル視した。

 もちろん自分の中だけで。彼に直接宣言したり関わろうという気は微塵もない。