「話してみたくなったんだ。俺の外見や生い立ちとかそんなの関係なく、話したことがないからわからないって素直に言ってくれたほのかと」

 穂高の言い回しに、女子たちの間で彼の話題があがったときの記憶が蘇った。

『じゃぁ、ほのかは安曇くんをどう思う?』

『わからない。話したこともないから』

 あのやりとりを穂高は言ってるのかな?  聞いていたの?

 まさかのきっかけに戸惑いが隠せない。穂高はおかしそうに私の頭を撫でながら聞いてきた。

「で、話してみてどうだった?」

「それは……」

 どういう感想を述べればいいのかわからない。さらに自分の彼に対する気持ちは、さっき勢い余って告白したばかりだった。

 顔が一瞬で熱くなり、誤魔化すように質問で返す。

「穂高こそ、そんな理由で私に話しかけて実際どうだったの?」

「ここまで態度で示しているのに伝わらない?」

 彼の切り返しに私は顔をしかめる。ずるい、私はちゃんと伝えたのに。

「なにそれ。態度じゃなくて言葉にして伝えてよ」

「伝えたら、決意が鈍る」

 わずかに穂高の声のトーンが落ち、私の心も揺れた。けれど、すぐに彼は調子を取り戻す。

「でも、やっぱり俺たちの出会いは運命だったんだと思う。実はアメリカに行く前に、ほのかに会いに行くかどうか迷ったんだ。ただ会ってどうするのかっていう気持ちもあって……。そうしたら、まさかほのかが自分から俺に会いに来てくれるなんて」

 そこで一呼吸の忍ばせ、穂高は笑った。

「すごいタイミングで笑ったよ。思わず運命を信じてみたくなったくらいに……嬉しかった、ありがとう」

 彼の笑顔に、潜めていた感情が暴走しそうになる。やっぱり彼の決意は変えられないのだと悟った。けれど、これ以上引き止める言葉も見つからない。

 自分の想いは十分に伝えた。もう泣くのも責めるのも嫌だ。

 ぶっきらぼうに私は返した。