バイバイまたね、クドリャフカ

「さっきから、ほのかにしては珍しいな。俺のことをそこまで言い切るんなんて」

 穂高は顔を歪めて笑う。口角は上がっているのに目は泣き出しそうに見えた。

「言い切るよ。だって、わかるの」

「なんで? ほのかにどうしてわかる?」

 父に会いに行く前に、彼と同じようなやり取りをしたのを思い出す。彼はあのときなんて答えた?

 私は言葉を詰まらせる。感情の昂りと共に瞳から涙が零れ落ちた。

「……好きだから」

 唇を震わせ必死に紡いだ言葉は。すぐに波音に掻き消される。彼に届いたのか、届かなかったのか。

 溢れる涙を指先で乱暴に拭って、彼の目をまっすぐに見つめた。

「穂高が好きだから。だからお願い……私と一緒に生きてよ」

 言葉尻を弱くし、最後は涙で声にならない。ちゃんと伝えたいのに。

「っ、大勢の、人のために、命を懸けるより……私と生きて。私……」

 涙を止めようと躍起になっていると、正面から抱きしめられた。

「ありがとう、ほのか」

 耳元で囁かれた声は、いつもの彼らしく穏やかで優しい。でも、その意味をどう受け取っていいのかわからない。

「ありがとう」

 彼の言葉は普段は固く閉じている私の涙腺をあっさりと緩ませてしまう魔法が込められている。もう涙を我慢するのをやめて、私は彼の胸に顔を押し付けて素直に泣いた。

「……そういえば、どうして俺が現国が苦手だって嘘ついたのかって話してなかったな」

 ふと彼が今思い出したと言わんばかりの口調でいきなり告げてきた。

 気になっていたことでもあったので私はぴくりと反応し、ゆるゆると顔を上げる。すると穂高はそっと私の頬に触れた。