バイバイまたね、クドリャフカ

 みんな抱えているものも事情も違う。でも世界の終わりといわれている世の中で、必死に生きようとしている。

「私、自分の価値がわからなくて、生きている意味が見つけられなくて、ずっと苦しかった。穂高も同じだったんだよね?」

 疑問ではなく確信をもって尋ねる。穂高の瞳がわずかに揺れた。けれど私はブレずにまっすぐ彼を見つめる。

「穂高の考えは立派かもしれない。自分の命を人類の、誰かのために使おうなんて。でもね、私は嫌なの」

 穂高は苦虫を噛み潰したような顔になる。嫌悪というより痛いところを突かれたといった表情だ。そして彼は躊躇いつつ苦しげに言葉を振り絞った。

「……ほのかだって誰かの命で大勢の人が、自分が助かるならイエスって言うかもしれないって言ってただろ」

 馬鹿だよ。口にした穂高自身が傷つくだけなのに、わざと私を責めてみて。そこまでしなくていいんだよ。

「違う」

 私はきっぱりと否定した。

「穂高だから嫌なの。どんなに大勢が救われるんだとしても、たとえ人類が助かるためでも私は穂高を失いたくない」

 大勢のために一人の命を犠牲にするのが是か非かなんて、正直わからない。はっきりとした自分の信念も持てない。

 でも気づいた。私には穂高が必要で、穂高じゃないと駄目なんだって。彼は誰にも代えられない存在なの。

 あまりにも身勝手な私の暴論に、穂高は反論する気さえなくなったらしい。固かった雰囲気がわずかに崩れる。