「成功率が極めて低いのはわかっている。どれも実験段階で不安定だ。犠牲者だって出ている。でも月の落下を食い止めるためには誰かが命を懸けないといけないんだ。クドリャフカみたいに」
そこで彼はまたあのセリフを口にした。
「俺はクドリャフカになりたいんだ」
肌に突き刺さるほどの静寂。キーンという耳鳴りが収まらない。ここまできて、ようやく彼の意図するものがわかってきた。
「なん、で」
どれくらい時間が経ったのか。声になったのかさえ自分でも曖昧だ。穂高はあくまでも冷静だった。
「地球が助かったとしても、俺は長く生きられない。だったらこの命を地球のために懸けてもいいと思ったんだ」
「やだ」
反射的にかぶせた声に穂高は変わらない調子で続ける。
「もうずっと前から決めていたんだ。父さんと相談して、アメリカに渡る準備も整っている」
私は大きく目を見開いて固まった。それを見て穂高は笑う。困ったような、悲しそうな顔だ。
「誰にも言わないつもりだった。誰にも会わないままここから消えるつもりだった。けれどまさか、ほのかかが会いに来てくれるなんて思ってもみなかったから……嬉しかったよ」
まるで終わったかのような、思い出を語るような彼の言い草が胸に刺さる。
「やだ、やだよ。なんで? どうして穂高なの?」
病気になったことも、彼が命をかけようとしていることも。なにもかもが納得できない。真面目に自分の目標に向かって生きていた彼がなにをしたの。
理不尽な思いは散々してきた。わかっていた、この世界に平等さなんてなにひとつない。
そこで彼はまたあのセリフを口にした。
「俺はクドリャフカになりたいんだ」
肌に突き刺さるほどの静寂。キーンという耳鳴りが収まらない。ここまできて、ようやく彼の意図するものがわかってきた。
「なん、で」
どれくらい時間が経ったのか。声になったのかさえ自分でも曖昧だ。穂高はあくまでも冷静だった。
「地球が助かったとしても、俺は長く生きられない。だったらこの命を地球のために懸けてもいいと思ったんだ」
「やだ」
反射的にかぶせた声に穂高は変わらない調子で続ける。
「もうずっと前から決めていたんだ。父さんと相談して、アメリカに渡る準備も整っている」
私は大きく目を見開いて固まった。それを見て穂高は笑う。困ったような、悲しそうな顔だ。
「誰にも言わないつもりだった。誰にも会わないままここから消えるつもりだった。けれどまさか、ほのかかが会いに来てくれるなんて思ってもみなかったから……嬉しかったよ」
まるで終わったかのような、思い出を語るような彼の言い草が胸に刺さる。
「やだ、やだよ。なんで? どうして穂高なの?」
病気になったことも、彼が命をかけようとしていることも。なにもかもが納得できない。真面目に自分の目標に向かって生きていた彼がなにをしたの。
理不尽な思いは散々してきた。わかっていた、この世界に平等さなんてなにひとつない。


