その最初の犬の名前がクドリャフカ。雌だという彼女は適性検査をクリアし、数多の犬の中から選ばれた正真正銘の優秀な一匹だった。
一通りの訓練を終えた彼女は世界初の宇宙船に乗せられ、空へ旅立っていったという。
そこまで聞いて、計画は順調だったんだと窺えた。でも――
「それで、クドリャフカはどうなったの?」
おそるおそる尋ねると、穂高は私の頭をよしよしと撫でた。まるで慰めるかのように。犬にするみたいに。
「最初からこの計画にクドリャフカが戻ってくる予定はなかったんだよ」
なんとなく予想はしていたもの、まさか始めからクドリャフカの運命は決まっていたなんて。まったく関係ないのに、胸が痛んで勝手に傷つく。
「幼い頃に父さんにこの話を聞いて、ものすごくショックを受けたんだ。父さんの仕事や研究に反発心も抱いた。でも人間のエゴだって責めて終わりにするのはなにか違うと思って……。クドリャフカのおかげで人類は宇宙への道を開けて、全容はまだまだでも未知なものの解明に取り組めている」
彼の好きな宇宙の話をしているのに、いつもの雰囲気は微塵もない。暗がりの中、一瞬だけ目に映った穂高の表情は、まったく知らない人みたいだった。
今日一日ずっとそばにいて、見てきたはずなのに。
「今、月の落下騒動をなんとかしようとNASAを中心に世界が必死になって動いているだろ。核兵器にミサイル。いがみ合っていた国同士が手と手を取り合って懸命に対策を練っている。でも、どれも上手くいっていない。ほのかも知っているとだろうけど……」
穂高がなにを言おうとしているのか、彼から続けられる言葉は予想できない。ところが頭の中では、なにかが警鐘を鳴らしている。これ以上、聞きたくないと叫んでいる。
一通りの訓練を終えた彼女は世界初の宇宙船に乗せられ、空へ旅立っていったという。
そこまで聞いて、計画は順調だったんだと窺えた。でも――
「それで、クドリャフカはどうなったの?」
おそるおそる尋ねると、穂高は私の頭をよしよしと撫でた。まるで慰めるかのように。犬にするみたいに。
「最初からこの計画にクドリャフカが戻ってくる予定はなかったんだよ」
なんとなく予想はしていたもの、まさか始めからクドリャフカの運命は決まっていたなんて。まったく関係ないのに、胸が痛んで勝手に傷つく。
「幼い頃に父さんにこの話を聞いて、ものすごくショックを受けたんだ。父さんの仕事や研究に反発心も抱いた。でも人間のエゴだって責めて終わりにするのはなにか違うと思って……。クドリャフカのおかげで人類は宇宙への道を開けて、全容はまだまだでも未知なものの解明に取り組めている」
彼の好きな宇宙の話をしているのに、いつもの雰囲気は微塵もない。暗がりの中、一瞬だけ目に映った穂高の表情は、まったく知らない人みたいだった。
今日一日ずっとそばにいて、見てきたはずなのに。
「今、月の落下騒動をなんとかしようとNASAを中心に世界が必死になって動いているだろ。核兵器にミサイル。いがみ合っていた国同士が手と手を取り合って懸命に対策を練っている。でも、どれも上手くいっていない。ほのかも知っているとだろうけど……」
穂高がなにを言おうとしているのか、彼から続けられる言葉は予想できない。ところが頭の中では、なにかが警鐘を鳴らしている。これ以上、聞きたくないと叫んでいる。


