バイバイまたね、クドリャフカ

「……意外と、地球としては本望なのかな? どこからか突然やってきた隕石や地球に住む人間のせいで滅んだりするくらいなら、ずっと傍にいた月に終わらされるのが」

「まだ終わるとは決まってないだろ」

 穂高が力強い声で言い切った。肯定するように白木さんが続ける。

「そう。進歩はしているものの天文学……宇宙については、まだ未知な部分ばかりだ。月に隕石がぶつかったのもなんだかんだで予想できなかったし、月に地球が落ちてくるという話だって専門家の間でも意見が割れていたりする」

「落ちてこないかもしれないってことですか?」

 希望を持って聞いてみる。しかし、それに対しては力強い返事は得られなかった。

「なんとも言えないね。一応、対策としてNASAとしては、探索機や宇宙ステーションの打ち上げなど色々試みているみたいだが、どれも期待できそうにないらしい。先日も月に向かって打ち上げたロケットが不発に終わって犠牲者を出したという話だし」

 そのニュースは私もテレビでちらっと見た。穂高を見ればその顔はわずかに陰っている。やっぱり覚悟を決めないといけないんだ。

 背筋がぞくりと震え、心臓を冷たい手で掴まれたような痛みと不快感に脂汗が滲む。

「でも不思議ですね。落ちる、落ちるって言われて、もう八月まで来た」

 穂高が呟く。月が地球に落ちてくると言われ世界は混沌と化した。それこそ世界の終わりという言葉がぴったりなほどに。

 だから一説では、いつ落ちてくるのか実ははっきりしているが、公表したらいよいよ世界が大混乱になるとしてわざと伏せているのではないかとも言われている。

 本当のところはわからないけれど。

 三分後かもしれない、一時間後かもしれない、明日かもしれない。そうやってずっと緊張状態でいるのも正直疲れた。