「ほのか、こっちに移動できる?」

「う、うん」

 ぼこぼこしていてお世辞にも座り心地はいいとはいえない。バランスを取ながら荷台の上を這うようにして穂高の方へ移動する。

 穂高の隣に座りあおりにしっかりと背中をつけ体勢を安定させた。ぎこちない私に穂高が問いかける。

「怖くない?」

「全然! むしろワクワクしてる」

 風を受け、髪を押さえながら私はつい声を張り上げて答えた。

 不思議。もうすぐ世界は終わるのに。絶望と不安と諦めしかなかったのに。

 軽トラの荷台に乗ったのももちろん初めてで、今から天文台に行ける期待もあるのかも。心地いい高揚感が不安や恐怖などを押しのける。

 穂高は私を固定するためか、さりげなく私の腰に腕を回して自分の方に引き寄せた。心拍数が一気に上昇する。これくらいの密着で照れるのは、今さらだ。

 そうは思っても、まともに顔が上げられず穂高の顔が見られない。

『大丈夫。俺がいるから』

 ようやく自覚した、彼に対する想いを。愛とか恋とか知らないし、今まで色恋沙汰とは無縁だった。だから、これを恋と呼んでいいのか自分で判断もできない。

 でも穂高は特別なんだ。それだけは確信をもって言える。今まで出会ってきた誰とも違う。

 いつ地球が滅びるかもしれないというこんなときでも、私はこうして彼と一緒にいたい。この気持ちは本物なの。