浮かんだ疑問に答えるように宮脇さんは面倒くさそうに続ける。

「谷口さんとか、あそこにいた連中がやっぱり心配だから送っていってやれって言い出したんだよ。で、車乗って追いかけてみても、どこにもいねぇし」

「す、すみません」

「で、行ったのか?」

「それが……」

 私は首を縮めながら言いよどんだ。それで宮脇さんは察したらしい。

「乗れよ。ここまで来たんだから乗せてってやる」

「え」

「ただしふたりとも荷台にだ。落ちないようしっかりつかまっておけ」

「派出所前で言います?」

 穂高が呆れたようにツッコんだ。すると宮脇さんが愉快そうに笑う。

「いざ月が地球に落ちてきそうになったら、みんな荷台にでも乗り込んで必死で生きようと逃げるんだろ。警察もいちいち取り締まってらんねぇよ」

 どうだろう。父に見つかったら普通に違反として捕まるかもしれない。そんな考えが過ぎる。でも宮脇さんの言う通り、こんな状況だ。

 私と穂高は顔を見合わせる。ふたりの気持ちは一緒だ。

「ありがとうございます、よろしくお願いします」

 宮脇さんは運転席から降りると、軽トラの荷台部分を囲っているうしろのあおりを倒した。穂高が先に乗り込むと、ぎしっと軋む音がする。

 不安になりながらも、手を差し出してくれたので私は彼に引っ張り上げてもらい乗り込んだ。宮脇さんが再びあおりを起こし、運転席に戻る。ゆっくりと車は走り出した。