ほとんど転びそうな勢いで階段を上ると、もう湊は屋根の上にいた。
「あ、電気消してこいよ。」
「なんで?」
「いいから早く、今度何か奢ってやるから。」
「うん、高いアイスがいい。」
現金なやつだ。
暗くてよく見えないから慎重に外に出る。
「うわっ!」
気をつけていたのに足場が分からない。
「しっかりしろよ、ほら。」
手を掴まれる。
その手に安堵してゆっくり今度こそ屋根に着地する。
「ありがとう、助かった。」
「ん、始まるぞ。」
「何があるの?」
「あの辺見てみろ。」
「うん」
何が見えるのかはよく分からない。
だけど、湊はすごくわくわくしているらしい。
「……あっ!流れた!流星群?」
「今日は流星群が良く見えるらしいんだぜ。
晴れてよかった。」
「そうだね」
そうだった。
湊は星の観察が大好きなのだ。
私には、そうやって夢中になれるものはない。
そういうところでも、湊にいつも置いて行かれる心地になってしまう。
羨ましいのだ。


