夜になった。
今日はお母さんは帰らないらしい。
新しい男と会ってくると機嫌よくメロディーに乗せて朝から歌っていた。
この年で男?
やめて欲しい。
機嫌がいい時に写真で見たことがあるけれど、はっきり言ってダサかった。
売れないギタリストと言った風情で、こんな人が新しい親かと思うと恥ずかしくて仕方ない。
おまけに定職にも就いていない。
今時の高校生の方が稼いでいるくらいの収入だ。
生活力なんてゼロに等しい。
私には関係ないけれど、両親で参加するイベントが今後ある時は絶対に来ないで欲しい。
あーあ。
……こんな家、生まれてきたくなかった。
机に伏せていると、インターホンが鳴った。
こんな時間に、誰だろう。
「はあーい」
「ほら、始まるぞ。」
ずかずか上がって階段を勝手に登る。
お邪魔しますくらい、言え。
「え、ちょっと、待ってよ!」
「早くしないと始まる」
「……あ、うん」


