星降る夜の月



「あ、戻ったんだ。」


「うん、音読終わったから。」


「ここ分かんないわ。」


指の先を見ると、基本レベルの問題だった。


湊は、本当は分かっている気がする。


最近、思う。


こんな問題が分からないほど湊は勉強が出来ない訳では無い。


むしろ出来る方だ。


何を以てこんなことをするのだろう。


私は今、どんな難問よりも湊が分からない。


「聞いてる?」


「……え、ああ、ごめん。どれ?」


「数学」


「……それはここに代入するんだよ。

それでこの計算になる。」


結局本当の事を知る勇気もなく、いつものように教えていた。


それを真顔で聞く湊。


聞きたいけれど、聞けない。


そんな自分も大嫌い。


「ふうん。あー分かった。

じゃあ俺、帰るわ。」


「うん、分かった。

気をつけてね。」


俺が落ちるわけねえだろというようなことを言いながら屋根伝いに戻って行った。


「……分からないなあ」


思わず呟く。