「あたしはこいつみたいな偽善者が大っ嫌いなの!」
生意気だ。
顔も生意気だ。
「偽善者の意味、分かってる?」
「こいつみたいなこと。」
親に向かってこいつとか。
何様のつもりだ。
自分のことを棚に上げて言う私も私だけれど。。
「それは偽善じゃない。
少なくとも、私はあなたのお母さんにケースを拾っていただいたことに感謝をしている。
何かをしてもらった人の立場から偽善かそうでないかは判断すること。
あんたの判断はお門違いもいいとこよ。」
湊以外の人とこんなに喋ったのは久しぶりだ。
「……す、すみません。」
多分、このお母さんは子供をずっと甘やかしてきたのかもしれない。
子供に対してきつく叱ったことがないのかもしれない。
「はいはい、どうもすいませんでした!」
憮然とした表情でナオって女の子は立ち去った。
その後をお母さんが「すみません」とか言いながら走って追いかけていた。


