秋の風が吹き始めた9月の末のこと。
昼休みお弁当を食べた後のりかちゃんとまひろちゃんとお喋りをしていると、日直で職員室に行っていたはずの知世が教室に駆け込んできた。
「あのね!剣道場ですごい試合やってんの!!」
「剣道場?」
前にもこんなことあったっけ?
あの時は香取くんが一人で5人に次々と勝っちゃったんだよね。
「そう!香取くんが試合やってる!」
「へっ!?」
4人で剣道場に駆けつけると例のごとく大勢のギャラリーが集まっていた。
パン!パンパン!!
ダダダダン!!
道場に響く竹刀のぶつかる音と踏み込む足音。
「ヤァァァーッ!」
気迫にこっちが気圧されそうになる。
試合場を覗くと、一人が今まさに頭上に掲げた竹刀を振り下ろさんというところだった。
「メェーーンッ!」
パァーン!
竹刀が相手の頭頂を捕らえる。
「面あり!勝負あり!」
審判が告げると、ギャラリーがざわついた。
「香取の奴、圧勝じゃんかよ!」
(こ、これは!?今度は何事なの!?)
丁寧に一礼した香取くんは試合場の外へ引き上げる。
それを見守りながら知世が言う。
「これは秋の大会、ウチ良いとこ狙えんじゃない?」
「え、何?どういうこと…?」