「正弦定理でこの角が求められるから、内角の和から引けば」
「あっ!ここの角度が分かるんだぁ!」
香取くんの指導のもと、苦手な数学の問題集も着々と仕上がっていく。
私がご機嫌で答えを書き込む横で香取くんが麦茶を飲んでいる。
(あ、浮かれてて書き間違えちゃった!)
消しゴムを取ろうと手を伸ばすと、ちょうどグラスを置こうとした香取くんの手と接触した。
ガチャン!
派手な音と共にテーブルに麦茶が溢れる。
「あっ!ごめん!!」
慌ててバッグからタオルハンカチを取り出して水溜まりを覆う。
「そんなの使わなくていいから。ちょっと待ってて」
香取くんは部屋を出ていくと、しばらくして台ふきんを手に戻ってきた。
台ふきんでテーブルと床を拭くと、私のハンカチを取った。
「洗ってくるから」
「あ、いいよそんなの!」
香取くんを追って急いで立ち上がる。
けれど…
「きゃっ!!」
(やだ!足痺れてるっ!!)
感覚を失った右足首が伸びきって、くにゃりと力が入らないまま接地する。当然私はバランスを保てずそのまま宙を舞った。
「星宮!」
香取くんが手を広げ、私を受け止めようとしてくれる。
でもそれではとても間に合わず…
「きゃあぁ!」
ドン!ドサッ!!
香取くんを巻き添えにカーペットの上に倒れ込んだ。



