一人になって、私はそっと自分の唇に触れる。

 香取くんの感覚が今も残っているみたいで、まだ胸がドキドキする。


『キス、しようか?』


でも…

『早く慣れて』なんて台詞。


 分かってる。
 香取くんは私なんかにドキドキしないってことを。
 だって香取くんは私の『架空の恋』を応援してくれてるだけなんだもの。

 私ばっかりいつもドキドキして、切なくて、でもそんなのはしょうがなくって。

 いっそ諦められたらどんなに良いかと思うのに、傍にいたら嬉しくてますます好きになって…


 叶わないって分かっていても、でも私もう、苦しいほど貴方が好き過ぎる。

 一緒にいてもどんどん好きになってしまうって分かってるのに、それでも一緒にいた過ぎる。

 この想いは絶対秘密。その『恋』の相手が香取くんだって分かってしまったら一緒にいられなくなる、なのに想いが溢れそうなほど好きで堪らなくなる─


(ごめんね、香取くん…)


『これはただの練習だから』─


 でもやっぱりこれは、私の『ファーストキス』っていうことでも…いいですか?─


     *   *   *