「だいぶ暗くなったね。そろそろ始まるかな?」
頭上に広がる藍色の空。
月もなく、ひたすら広大なキャンバスが今か今かと彩られるのを待っている。
「あぁ」
見上げる香取くんの横顔は心なしか口角が上がっているように見えた。
「お待たせいたしました!これより第72回うえた川河川敷大花火大会を開催致します!」
アナウンスと共にヒューと音を立てて登り竜が上がる。
「うゎあ…」
続けて赤や緑、紫の花が次々と咲き、真昼のように空を明るく照らす。
いとまなく打ち上がる華やかなスターマインが私に息をすることすら忘れさせ、瞬きながら垂れ落ちる菊花の花弁が感嘆の溜め息を誘う。
幾重にも色を変えながら花開く目映い光たち。それらがまるで競い合うように夜空を彩る。
幻想的な光のシャワーは地上で見上げる小さな私たちを魅了し、どこからか歓声と拍手が聞こえてくる。
「綺麗…」
無意識のうちに私は呟いた。



