『教えてやろうか?恋の仕方』

『好きな奴と上手くいきたいんだろ?』

『稽古、つけてやるよ』─

 結局あの日から私は香取くんの恋愛指南を受けることになってしまった。


 具体的には『香取くんとお付き合いをする』というもの。

 と言ってももちろん本気で付き合ってもらえるわけではなくて、あくまでお稽古のためのロールプレイング、『疑似お付き合い』なのだけど…


        *


「反応が遅い。28点」

「うぅ…」


 香取くんのお稽古は『及第点は70点以上』。
 始めて1週間が経つけれど、未だそれには及ばず…

(28点なんて苦手な数学でも取ったことないよ!)


「星宮、今日の帰り時間ある?」

「あ、今日はちょっと…」

 知世たちとアイス食べに行くんだもん。

 そう思って香取くんに断ろうとしたんだけど…


「……」

(うっ…)


 その水晶みたいな綺麗な瞳に見据えられると、弱い…
 何か断り切れなくなってしまう。


「う…うん」


 香取くんとのお付き合い、もとい、『疑似』お付き合いはこんな風に香取くんのアドバンテージで粛々と進められていく。

        *