一方のりかちゃんは「うーん」と首を傾げる。

「香取くんはあくまでファンって感じかなぁ。押しても引いても手応えないし。
 それにもっと好きな子いるから」

「へっ!?」

「ふぁっ!?」


 のりかちゃんの思いの外割り切った発言にみんな一様に驚く。

「そうなんだ…?」


「そう言う知世はどうよ?」

「私?うーん彼氏は欲しいけど「この人!」って感じの人に出逢えないんだよなぁ…」

 お喋りしているうちに教室に着いて、私たちはドアの近くの隅っこで机をくっ付けお弁当を広げる。
 私は買ってきたばかりのペットボトルのレモンティーをぷちっと開け、一口流し込む。


「え、じゃあ瑠璃」

「ん?」

 レモンティーをもう一度口に運ぶ。


「瑠璃の好きな人は?」

「ぐ…ごほっ!ごほごほっ!ごほっ…」

「ちょ!大丈夫!?」

 慌ててハンカチで口を拭う。


(やだもう…)


『瑠璃の好きな人は?』なんて、香取くんの顔が頭の片隅にちらついてしまって、狼狽えてしまう。