「買い物ってこれだけで?」

「うん!ありがとう、リトちゃん」



平日の昼間。

人通りも多くない買い物日和の日に、美少女二人がお店のロゴの入った袋を持って仲良く買い物している。



「いいって。それにオレだって気になってた店だったし」



ふわり。

彼女に向けて微笑むリト。


ピンク色の髪に小さな顔。

女の中ではだいぶ低めのハスキーボイス。


外見はどこからどう見たって完璧な美少女だが、中身はちゃんと男で以前なんで女装をしてるの?と問いかければ、「似合ってるでしょ?」と再び笑うだけだった。



「それに、ハニーが行きたい所なら何処にでも連れて行ってあげたいの」

「…リトちゃん、!」



仲の良すぎる友達か、はたまたレズに見えてしまうかもしれないが、カップルでイチャイチャしているよりも、こっちの方が案外気にされないというのもメリットだと思う。

女子同士がイチャコラ抱きついていたとしても、周りの人々は「仲いいなー」くらいにしか思っていないのだから。


しかし、女子同士(片一方は男)故にこういう場面にはよく出くわす。



「お姉さん達、暇ですかー?」



世でいうナンパ。

まあ、美少女二人が揃いも揃って寄り添っていれば、こうなることも当たり前なのだが。



(めんど、)



手馴れた手つきで彼女の手をとり、目の前にいた男をないものとして扱う。



「ちょ、ちょっ、ねぇ。少しお話しとかできないかな?」

「急いでますので」



しつこい男を交わし、前に進もうとするものの、それが気触れた男はさらに面倒くさい行動に出る。



「ね?彼女はどうかな?」

「ちょ」



リトから標的を変え、今まで黙っていた彼女の方へ狙いを定める。



「勝手にハニーに触んな」

「二人とも仲いいんだねー。あっちに俺の仲間も居るし」



どうかな?と男の台詞が続くはずだったが、思わず声が出なくなる。

まあ、無理もない。

今まで話しかけていた美少女二人が目の前でキスをしているのだから。


しかも、極めつけには…。



「オレ。男じゃ満足出来ないんだよね」



なんて言うものだから、男は青ざめて立ち去る。



「やっと行った…。ハニー、大丈夫だった?」

「…ッ、ふふ、ごめ、……ッもう無理」



繰り広げられた光景に吹き出し、苦しそうに笑い出す。

ツボの浅い彼女は口元を両手で抑えつつ、小刻みに震えている。



「少しからかい過ぎだよ」

「あーでもしないと、どいてくれないじゃん」

「ふふっ。それもそっか」



ナンパの対処方。……なんつって。



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女装趣味の彼氏さん と ツボの浅い彼女さん
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