「あ、見て満月!」
そんな寂しさを紛らわすように私はそう言った。
「ホントだ綺麗だね」
「みんなに見せよっと」
写真、パシャり。
「あの月はどんな食べ物に見える?」
「あ、今のは馬鹿にしたな?」
「あはは、ちょっとだけね。で、何に見える?」
「うーん、何だろな、思い付かないや」
「そっか、残念」
真っ暗な幕張の夜空に浮かぶ満月は、確かに食べ物には見えなかった。その代わりに、心にぽっかりと空いた穴に見えた気がした。