「自分に出来ないこと、見えないものは何でも新鮮で面白いよ」
「見えないもの……それって何だか違う景色を見てるみたいだね」
「そうだね。結局のところ、俺たちは同じ景色を見ていても、見え方は違っているし、その違う見え方をどんなに言葉にして伝えようとしても、俺や君が思ってることを完璧に伝えるなんてことはできないのかもしれない」
「……なんか寂しいね」
「そういう意味では人間ってずっと孤独なのかもね」
孤独。その言葉を噛み締めて実感するのは、ちょっと難しい。だってポケットからスマホを出せばすぐに誰とでも繋がれるから。ずっと昔に卒業して会ってなかった友達も連絡を取りたいと思えばいつでも取れるし、連絡は取らなくてもプロフィールの写真見て、うわぁ!この子垢抜けたなぁ、なんてびっくりすることもできる。「送信する」ボタンをポチッと押せば、自分の全てが伝わると、みんな信じてる。
でも、だから私はこの時代に生まれて幸せだと思ってる。この時代の寂しいっていう気持ちはとても限定的なもので、「もう二度と会えない」っていう寂しさは滅多になくて、「次いつ会えるかな」の寂しさばかりだから。それはとっても幸せなこと。

でもこの時彼が言った孤独という言葉は、妙に重たくて、私には抱えきれそうになかった。すごく寂しいと、感じた。