「私…!」



「行っておいで」



サユキは私に先輩の飛行機の番号の書かれた紙を渡すとそっと背中を押す。



「彩葉当たって砕けてこい!」



「誰が砕けるって?」



私はサユキに目を合わせて自信満々に笑った。


走って走って走りまくった。

はやる気持ちはそのままに、急かすような風に押されて…。



空港に着いた。もう、走りすぎてテンパった足は言うことを聞かないくせに、ただ壊れたおもちゃみたいに先輩を探す。

タダでさえ、広い空港だ。

国際便の方に走るも周囲にはスーツケースを持った人ばっかりだ。

生憎、スマホは部室に置いてきた。


連絡の仕様もない。いや、あっても連絡する勇気は私にはなかった。



『もう会えなくなるかもしれないんだよ』


ふと、さゆきの声を思いだした。

嫌だよ。

こんなお別れは。

こんな嫌だよ!嫌だ、嫌だ…。



人がいっぱいいるのに、呆然とたってる私だけ取り残されたみたいだ。


俯いたら諦めたのと同じだって分かってるのに、思わず下を向く。