もともとあたしは、人を傷つけようとしてるわけじゃなかった。
これでも、優しくしようと努力してた時期はあったんだ。
言い方を努力して、傷つけないように。
優しくなるように。
気をつけて、気をつけて。
でも、全然優しくなかったみたい。
亜緒は怖いって、中学時代1番仲よかった子に言われた。
何考えてるかわからない。
いつも笑わない。
気難しい顔してる。
人と関わりたくないの?なら、協力してあげるよ。
そんなことまで言われて、耐えられるメンタルなんてあたしは持ってなかった。
『なんでそんなこというの…』
傷ついた、たくさん。
その子はそれであたしが傷ついたことに気づいたようで謝ってきたし、表面上では許してあげた。
だけど、心の奥底ではどうしても許せなかったんだ。
一人で泣いた日だってあった。
その痛みを、消せないなにかを。
未だに鮮明に思い出せる。
だから、知り合いが誰もいないここを選んだんだ。
ちょっとした進学校だったし、私が住んでた学区から電車で2時間くらいかかる場所だったから、同じ中学の子が受けるなんてあり得なかった。
現にあたしと同じ中学の子は誰一人としていない。
あの子に傷つけられた時、あたしは気づいたんだ。
あたしはこうやって人のことを同じように傷つけてきたんだって。
誰かに言われるってことはきっとあたしが傷ついた倍、あたしはだれかを傷つけている。
それだけ、数が多いってことだから。
ならば、誰とも関わらなきゃいい。
関わらなきゃ、傷つけることも傷つけられることもないんだから。
もう泣きたくないんだよ。
だから。
もう邪魔なんてしないで、茜。



