しかし、彼は決してそこを動こうとはしなかった。
そしてしまいには、意を決したようにまた話し始めた。
「私には、あなたの考えていることが分かりません。なぜこのようなことを...」
少しためらいがちな話し方。
遠慮をしているのは感じられる。
しかし、一度ならず、二度までも私に向かってこようとは...
思いもしなかった。
...これが、現役の頃との違いというものですかね
引退した私に対して、彼がためらうことはもう何もない。
分かっていたことではあるけれど、今もなお私に対して上下関係を保ったまま接してくるバトラーがほとんどなのが事実。
君も、そちら側の人間だと思っていたのにね...
どうやら私の読みはあまかったらしい。
「君には関係のないことです。」
わざと言葉を遮り、一蹴する。
今更、態度で威圧するつもりはない。
しかし、そんな態度に見えてしまおうが、そうとしか言えない事情がこちらにはある。
君に、私の”目的”など話すつもりはないのだから。
「...」
私の勢いに圧倒されたのか、一瞬言葉につまる。


