「いいですか、よく聞いてください。
いま、バトラーという者はこの国でほとんど存在しないんです。
しかし、私たちは知っているのです。
バトラーが誇り高き仕事であることを。
そして、先代のバトラーたちが作り上げてきた輝かしいその歴史を。
ですから、今残っているバトラーたちは、どんなことがあってもその歴史を途絶えさせるわけにはいかないとお考えです。
以前でも厳しかった訓練はさらに厳しさを増し、自ら望んでここに来た人々ですら、脱走を試みるほどなんです。
...望んだ訳でもないのに、あなたがそのような思いをする必要がありますか?」
庭師の真剣な瞳が俺を見る。
...ここでそのバトラーたちを見てきたじいさんが言うんだから、相当に過酷な世界なんだろう
「それは...」
答えかけて言い淀む。
...俺はここに望んで来たわけじゃない。
ここに残る必要はない。
だけど...もし俺が逃げたら、このじいさんはどうなる...
それに...
「私は、心配なんです。あなたのご両親やお友達が...」
!!
”両親”や”友達”...
その言葉に心臓が大きく脈打つ音がした。


