男は手に持っていたものを俺の胸元に押し付けるように差し出す。
早く受け取れと言わんばかりに。
「なんだよこれ...」
俺は渋々それを受け取り、その場で広げてみる。
真っ黒な塊に見えたそれは、男が着ているスーツと同じものだった。
「なんで、スーツなんか...」
そう言いかけた時、男の声が重ねられた。
「テイルコート、だ」
...テイルコート?
俺には初めて聞く名前だった。
男の訂正する通り、よく見てみると、スーツとは微妙に違いがある。
ジャケットの後ろ側が少し長くなっていて、2つに分かれているところなんかがそうだ。
「...なんで俺に?」
こんなの、いつ着るっていうんだよ...


