音はゆっくりと近づいてきて、俺の目の前で止まった。
そして、静かに話し出した。
「...由比愛也くん、私は君を傷つけたりしない。怖がらなくていいんだよ」
静かな、どこか落ち着きを与えるような話し方。
低い声は、俺の体中を伝って、内側にしみこんでいくような変な感覚がする。
「私は、君を迎えに来たんだ」
そう言いながら俺の頭に置かれた手はとても温かくて、どうしてかすごく安心したんだ。
気づけば、あんなに強張っていた体はもう全身から力が抜けてしまったらしい。
俺は重くて動きの鈍い瞼を力の限り開こうとした。
何とか少し開くのが今の俺には精一杯らしい。
僅かなその視界には黒い人影が写っている。
けど、視界がぼやけて、その人の細部までは分からない。


